イベントレポート

FUTURE CARE CLUB第三回勉強会(前編)│香取照幸氏・柴山政行氏講演

2018.08.4

2018年7月31日(火)、東京都千代田区の都市センターホテルにて、介護業界の健全な発展を目的に発足した経営者団体「FUTURE CARE CLUB(FCC)」主催の第三回勉強会を実施しました。

この勉強会は介護法人の経営者が抱える経営課題や業界課題の改善を目的に毎月開催しているもので、著名な経営者や実績豊富な一流講師がゲストとして登壇します。

第三回となる今回からは、講演会に加え、参加者同士による意見交換会も行なわれるスタイルになりました。

まずは二部に分かれて講演会を実施。

第一部では元厚生労働省政策統括官であり、現在は在アゼルバイジャン共和国日本国特命全権大使を務めている香取照幸氏に、第二部は柴山政行公認会計士税理士事務所 代表取締役である柴山政行氏による講演が行なわれました。

第一部:在アゼルバイジャン共和国日本国特命全権大使 香取照幸氏講演

登壇者:香取照幸氏 在アゼルバイジャン共和国日本国特命全権大使


プロフィール:1956年 東京都出身

東京大学法学部卒業後、1980年に厚生省(現厚生労働省)に入省。2010年厚生労働省政策統括官(社会保障担当)や内閣官房内閣審議官(社会保障・税一体改革担当)、2012年厚生労働省年金局長、2015年厚生労働省雇用均等・児童家庭局長等を経て2016年6月に退官。2017年3月より在アゼルバイジャン共和国日本国特命全権大使を務めている。

都市部の急速な高齢化による介護施設・人材不足

香取氏の講演テーマは「地域包括ケア 大都市部における可能性」について。

社会保障改革を推進し、介護保険制度を確立した香取氏だからこそ知っている内情や今後の見解などをお話いただきました。

まず初めに、日本社会は人口減少・経済停滞の中で前人未到の少子高齢社会に突入していくことになると明言。高齢者の増加に伴い、今後下記の4点が懸念されると言います。

  • 厳しい経済状況
  • 都市の高齢化
  • 重度化の進行・認知症高齢者の増加
  • 高齢者一人暮らし・夫婦のみ世帯の増加

「これからは単に介護だけの問題ではなく、日常生活そのものをどうやって支えていくかが重要になるでしょう。高齢者が人口の30%を超える社会経済モデルは今のところ世界中どこにもないため、日本がいかに構築するのか世界が注視しています」

続いて、労働力人口や高齢者人口データに基づき、総人口は減少していく一方で高齢者人口が増加してことを力説。特に都市部では今後急速に高齢化が進み、介護施設・人材などの高齢者収容能力が不足する恐れがあると説明しました。

そのため、2025年には東京圏だけで80~90万人の医療・介護人材の増加が必要になると言います。

「都市部の高齢化が著しく進むため、全国の自治体に合わせた同じ考え方では政策を立てられません。都市部の介護施設・人材不足を補うには、在宅支援サービスなどの居住系サービスの増加や、ICT・ロボットの活用、保育と介護など保有する資格が相互に活用できるマルチタスク型人材の検討が必要となってきます。キャリアパスの作成や処遇改善などを行ない、中核人材を育成することも重要です」

また、認知症グループホームや小規模多機能型居宅介護など現場の実践から生まれた制度の例を挙げ、介護業界の問題解決のカギは現場にあると香取氏は言います。

「制度理念と現場実践は相互に支えあう関係。現在はそのやり取りが滞り気味ですが、介護保険などの制度を改善していくためには現場が提言し続けていくことが大切です。今後の介護業界は“認知症ケアの対応”や“独居世帯などの見守り対応”が必要となるでしょう。そのため、多職種の協働・連携によるチームアプローチの仕組みを構築しなければなりません」

国の制度を変えるためには提言し続けることが大切

講演会の最後には、事前に参加者から寄せられていた質問に回答していただきました。

参加者から寄せられた『自治体ごとに異なる認可基準について』や『政府が行なう調査内容の重複について』など様々な質問に、香取氏は一つずつ丁寧にコメント。

「国の制度やルールを変えるためには、合理的な理由を解説したうえで、とにかく意見を発信し続けることが重要です。特に今の時代は、ホームページに掲載したりSNSを使って発信するのも効果的です」

現場の声に寄り添った具体的な回答に、力強く頷く参加者の姿も見られました。

介護業界の政策の内情を知る香取氏ならではのアドバイスに、会場は大きな拍手に包まれ、第一部の講演が終了しました。

第二部:柴山政行公認会計士税理士事務所 代表取締役 柴山政行氏講演

香取氏による講演の後は、公認会計士・税理士である柴山政行氏にご登壇いただき、「介護業界における会計から見た経営改善」をテーマに、実際のデータや資料を参考に経営戦略について解説していただきました。

登壇者:柴山政行氏 柴山政行公認会計士税理士事務所 代表取締役


プロフィール: 1965年 神奈川県出身

埼玉大学経済学部卒業後、1992年会計士合格。1998年に柴山政行公認会計士税理士事務所を開設し、代表取締役を務めている。ビジネス誌「プレジデント」にも寄稿し、プレジデント社より『日本一やさしい「決算書」の読み方』を出版。他にも、『Google経済学』など著書多数。また、税務、コンサルティングの業務に携わりながら、会計教育も行なっている。

経営戦略は全業界に共通するもの

様々な業界の会計・コンサルティング業務に携わってきた柴山氏は、介護業界のみならず、経営戦略はどの業界にも通じるものがあると力説し、企業が満たさなければならない目的は以下の3点だと言います。

【1】公共

自社の強み(サービス内容)を細分化し、貢献すること。

【2】営利

従業員一人当たりの当期純利益を考慮し、ルールを設けること。

【3】健全

借金を見直して、計画的に資金繰りを行なうこと。

「会計的視点から見た事業を問わない経営原則は、企業ごとにルールを決めて守ることが大切です。ルールを決めずに行なう経営は、メーターや地図がないドライブと同じ。目標を決めてルールに沿い、ご紹介した3つの目的を満たす必要があります」

次に、戦国武将・豊臣秀吉の財務改善エピソードを参考に、社内業務・生活規律を見直してシステム化したところ、生産性と利益が上がった例を紹介。書類作成などの社内業務を減らすことによって、業績が上がっている企業が多いと言います。

「社内業務の改善に変えて、経営改善の第一歩は現場の分析も重要。TOYOTAでよく言われる、現場・現物・現実の分析による『3現主義』が財務改善のカギになります」

経営の強者になるためには、現状の1.7倍を意識する

会計ソフトを作成している上場企業の決算データをもとに、介護業界は他業界と比べて純利益が少ないことを指摘。

企業間の営業・販売競争に勝ち残るための理論“ランチェスター戦略”に基づくと、経営の強者になるためには、利益や人材などにおいて現状の1.7倍の力を要すると解説します。

「他企業と競うためには、戦うときの目安が必要です。現状の1.7倍を意識して、目標値を設定してみてください」

最後に、昨年発表された介護業界の倒産件数データを紹介。昨年度が過去最多であったと発表したうえで、介護業界の今後と経営対策について語りました。

「来たるべき増税時代とオリンピック不況に備えて、今後2年間は生き残ることが重要です。生き残るためには、企業の体制を見直す必要があります。そして、どの業界も共通することですが、それぞれの業界に沿った経営戦略を学ぶことが生き残るコツです」と柴山氏。

参加者に向けて「今日話したことが一つでも皆さんのお役に立てれば幸いです。今後のご活躍を願っています」とエールを送り、第二部の講演が終了しました。

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