FUTURE CARE CLUB第八回勉強会│森翔太氏講演
2018年12月13日(木)、東京都千代田区の都市センターホテルにて、介護業界の健全な発展を目的に発足した経営者団体「FUTURE CARE CLUB(FCC)」主催の第八回勉強会を実施しました。
この勉強会は介護法人の経営者が抱える経営課題や業界課題の改善を目的に毎月開催しているもので、著名な経営者や実績豊富な一流講師による講演会や参加者同士による意見交換会を実施。介護業界の現状や事例について情報共有などを行なっています。
第八回となる今回の勉強会では、株式会社ベクルーティングと株式会社フォレストホールディングスの代表取締役社長を務めている森翔太氏と、株式会社ベクルーティングの立ち上げから携わっているという樽氏による講演会が行われました。
登壇者:森翔太氏 株式会社べクルーティング・株式会社フォレストホールディングス代表取締役社長
大学在籍時に環境系商材の製造・販売会社である株式会社フォレストを立ち上げる。代表取締役社長として経営する傍ら、平成21年4月には株式会社リクルートに入社。主に人材系メディアの営業・組織マネジメントを担当する。平成25年には自身が経営する株式会社フォレストをホールディングス化し、年商50億超の企業へ成長させた。平成30年7月には、株式会社リクルートで共に働いていた樽氏と、総合PR会社ベクトルグループの人材領域担当会社として株式会社ベクルーティングを立ち上げる。現在は株式会社ベクルーティングと株式会社フォレストホールディングスの代表取締役社長を務めている。
最適な手法による“集客”と、入社まで“導客”するフローが必要
森氏の講演テーマは、「介護業界の新卒採用について」。
数々の企業の採用を担当されてきた森氏の経験をもとに、介護業界の新卒採用の手法や過去の採用事例などをお話しいただきました。
まず初めに、森氏は「新卒採用は営業活動と同じである」と明言。株式会社リクルートで学んだという人材採用に関する知識や経験をもとに、新卒採用における集客・導客のポイントを解説しました。
「営業活動と同様に、採用活動も応募者を集客し、入社まで導客していくフローが必要です。様々な母集団形成の選択肢から最大化できる最適な手法で集客し、細かいプロセス設計を行ない導客していくことが重要となります」
<集客>
◆自社の必勝パターンを見つける
◆競合他社の動き・情報をキャッチする
<導客>
◆設計したフロー毎にCVR・KPIを管理し、PDCAを回す
◆学生の不安・迷いを払拭し、口説き落とす
集客と導客における重要なポイントは上記の4点であると力説しました。
2021年春入社から実施される就活ルールの廃止の影響
続いて、樽氏により、2021年春入社の学生から実施される“就活ルールの廃止”による、採用活動の影響について説明が行なわれました。
現在、経団連に加盟している企業は、“3月から説明会・6月から選考・10月から内定交付”といったスケジュールのルールが設定されています。しかし、2021年春入社の学生からは、このルールを廃止。ルールが廃止されることによって、採用時期が早まる恐れがあると、樽氏は解説しました。
「年次に関わらずいつでも内定を出せるようになるので、大学1年生や2年生の段階で内定を出して社内イベントに参加させるなど、学生の早期囲い込みが始まると考えられます。そのため、広報活動や採用活動が一斉スタートだから有利であった人材紹介会社が、これからは不利になる可能性が高いです。これからは人材紹介会社に頼らず、自社で人材を確保する必要があります」
加えて、人材紹介会社に頼らない採用体制を実行している他社の事例を紹介。応募者を集客する手法を最適化し媒体効果を最大化することによって、内定数が増加し、採用単価も28.4%削減されたと言います。
樽氏は人材紹介会社の利用を辞めてしまうことで起こるリスクについても説明。リスクヘッジとして、人材紹介会社をマネジメントし、採用活動の基盤を強化していくことを提案しました。
新卒採用における具体的な提案例
続いて、勉強会の参加者である介護事業会社向けに、実際に株式会社ベクルーティングから提案した新卒採用におけるフローを紹介しました。介護業界の特性などを加味したうえで、以下の提案が行なわれたそうです。
【1】人材紹介会社の基盤を作る
介護事業会社と人材紹介会社の間に株式会社ベクルーティングが入り、仲介役として関与。人材紹介会社とのヒアリングを実施し、会社毎の戦略を立案する。
【2】競合が少ない説明会イベントに出店する
大手求人広告サイトなどメジャーな媒体の説明会イベントではなく、競合の少ない「個別」や「小規模」の説明会イベントに出店する。
(例:大学体育会専門イベント、1社限定イベントetc)
【3】募集媒体・紹介会社の見せ方を変える
介護業界は就職選択肢の第一志望になりにくいため、就職選択肢の第一志望として人気のIT業界寄りに、コンセプトの変更や応募促進、ホームページの修正などを行なう。
【4】応募者対応のフローを細かく設計・見える化する
応募から説明会・面接・内定など、入社までのフローを細かく設定。対応フロー図を作成し、図に沿って応募者対応を行なうことによって、応募者を入社まで徹底的にサポートする。
【5】内定前後には“人”でクロージングをかける
学生の不安を払拭するため、学生の境遇や悩みに合わせてタイプ別に対応。株式会社ベクルーティングが介護事業会社と内定者の間に入って、第三者としてコミュニケーションをとり、内定承諾まで伴走する。
講演会の途中では、参加者による質問が挙がるシーンも多々あり、森氏と樽氏が丁寧に対応。時折冗談を挟みながら、和やかな雰囲気のまま講演会が終了しました。
応募者の気持ちになり、採用について考える
講演会後には、株式会社ベクルーティングが作成したワークシートを配布。応募者の気持ちになって、応募や面接に対する不安を記入するコーナーが設けられました。
介護事業経営者は、自社の応募者の気持ちになってワークシートを記入。経営者以外の方は、現在の介護事業会社に入社した際のことを思い出しながら記入しました。
ワークシート記入後は、それぞれの参加者による発表が行なわれました。介護業界で働く前の業界に対するイメージや、周囲の反応、応募動機など実際の経験をもとにしたエピソードに、深く頷く参加者も。会社毎に情報共有を行ない、会社によって異なる採用フローや採用基準に驚きの声が上がるシーンもありました。
森氏は、「いま発表していただいた通り、応募動機や応募時の不安は人それぞれ。応募者のデータを集めれば、ターゲットに合わせた採用方法を導き出せます」と解説。応募者の気持ちに沿った採用方法・フローが、内定承諾に繋がると語りました。
厚生労働省からの進捗報告・今後について
勉強会の最後には、前回の勉強会で提案された“厚生労働省職業安定局の需給調整事業課の担当者による勉強会参加の打診”について、FUTURE CARE CLUB運営スタッフから進捗共有が行なわれました。
厚生労働省に問い合わせたところ、勉強会への参加や書面での回答は難しいが、電話での問い合わせ対応は可能とのこと。厚生労働省の他にも、労働局やハローワークなど様々な方面に、勉強会の講師として参加していただけるよう打診中です。
ご紹介したように、FUTURE CARE CLUBの勉強会では著名人による講演会や加盟法人同士の意見交換会を毎月実施。参加者同士による情報共有や意見交換を行ない、介護業界の課題を解決・業界変革を実現するべく活動しています。
次回の勉強会は、1月に開催予定。場所や時間など詳細については、後日ホームページなどで告知する予定です。ぜひ、奮ってご参加ください。