「介護のチカラで幸せな社会を作る」FUTURE CARE CLUB(FCC)キックオフ説明会が開催
2018年3月29日(木)、東京都港区品川のランドマークスクエア東京にて、介護業界が健全な発展を遂げることを目的として株式会社プレジデントマーケティングが主催する経営者団体、FUTURE CARE CLUBのキックオフ説明会と親睦パーティを開催しました。
説明会では、株式会社プレジデント社社長の長坂嘉昭、株式会社プレジデントマーケティング社長の平林昭一、訪問介護大手の株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズの宮本剛宏社長らが登壇。
熱気に満ちたスピーチ後の親睦会では、和やかな雰囲気の中、大手介護事業者の経営者達が積極的に意見交換を行いました。
FUTURE CARE CLUB設立の挨拶
株式会社プレジデント社 社長 長坂嘉昭
「プレジデント社がFUTURE CARE CLUBのようなコミュニティを作ることは、大変意義のあることです。それは労働力人口を増やし、社会の発展に大きく寄与すること。ひいては日本の国力を強めることになると考えています。」
弊社社長の長坂は、創業55年の歴史で培った情報発信力、コンテンツの力、そして政財界とのパイプを活用するFUTURE CARE CLUBを通し、介護問題の改善へ取り組むと語りました。
FUTURE CARE CLUB発足の経緯
株式会社プレジデントマーケティング 社長
FUTURE CARE CLUB事務局長 平林昭一
「私たちは、介護という社会的な課題に対し、具体的な手法をもって解決のアプローチを行いたいと考えました。」
ビジネス誌の分野で市販部数No.1であるプレジデント誌ですが、 近年は、実家・老後のお金・医療・介護といった生活回りの特集、中でも「親の介護」号が好評です。
一方で平林自身も、部下である有能な女性社員の一人が「介護離職」となったことで、介護問題を身近に感じたとのこと。
「人口のボリュームゾーンである団塊の世代が後期高齢者(75歳)となる、2025年問題も間近に迫っています。現代は長寿化が進み、人生100年時代とも言われますが、60歳で定年し、その後悠々自適な老後を過ごせる人は意外と少ないのかもしれない。」
このような経緯で「読者の介護問題を解決するには、介護業界が健全に発達していかなければならない」という結論に至ったと語りました。
介護業界が抱える3つの共通課題
ケアリッツ・アンド・パートナーズ株式会社 社長
宮本剛宏氏
「介護は、『ありがとう』って言われてうれしいよね」という、やりがい搾取も多い。事業者各社は、経営の効率化をきちんと考えることが必要ではないでしょうか?」
宮本氏はそう語り、介護業界の問題点をこのように整理しました。
介護業界に共通する3つの問題点
1.経営の質が低い
介護業界には、零細企業が多い。企業の規模が小さいと適切なキャリアパスをみつけにくく、業務を効率化しても顕著な効果がみられないのではないか。
2.労働力不足と周辺産業からの「中抜き」
介護は、労働環境が悪いため離職率が非常に高い。
しかし、新規で採用を行うために人材紹介会社等に頼れば、紹介料・手数料・コンサルティング料という高額な「中抜き」が発生する。
本来、業界の利益であるこのような資本は、スタッフの待遇改善などに還元されるべきではないか。
3、国や行政に意見・要望できる規模の業界団体が存在しない
業界団体が関係省庁へ意見を通すには、しかるべき規模である必要がある。
しかし現状は、介護業界1位の企業でも、売上のシェアが全体の1%程度という状況だ。
だからこそ、経営が強く優良な介護事業者が集まり、国や行政に対し「業界のマジョリティ」として意見・要望を呈示できる経営者クラブが必要である。
最後は、FUTURE CARE CLUBが目指すところを以下のように語り、多くの説明会参加者から共感のうなずきを誘いました。
- 加盟各社が、経営の効率化を行える環境を整える
- 周辺産業に吸い取られている業界利益を待遇改善などに活用し、業界内に留保する
- 人材の適切なケアで、異業種への転職を防ぐ
- 国や行政に、意見・要望を呈示できる団体となる
FUTURE CARE CLUBの今後
株式会社プレジデントマーケティング
FUTURE CARE CLUB事務局 徳元新樹
「将来的には、このクラブへの加盟そのものが社会や求職者に対しての価値となるよう、ブランド力を高めていきたい。」
FUTURE CARE CLUBの将来像をこのように語る徳元は、株式会社プレジデントマーケティングの個性とリソースを活かした、以下のような実践的な企画を開催してゆくと発表しました。
- 人材関連の勉強会
- 経営関係の講演会
- 学生を対象とした介護職関連の就職イベント
- 大学教授を招いた政策提言のできるワークショップ
親睦パーティの様子とご参加者の声
大手介護事業者の経営陣が参加した説明会後の親睦会では、盛んな意見交換が行われました。
この4月より、子どもを保育園に預けて職務に復帰するケアリッツ社の女性管理職の方にご参加いただいたことは、FUTURE CARE CLUBの発足で介護業界全体が明るくなっていくことを象徴的に示しました。
いつか誰かがやらなければならなかったこと
株式会社アンビスホールディングス社長 医学博士 柴原慶一氏
「利益が周辺産業へ高コストで流れ、スタッフに還元できていない点など、説明会でのスピーチには大変共感しました。FUTURE CARE CLUBのような組織の結成は、誰かがやらなければならなかったものです。大きな期待をよせています。」
介護業界でのキャリアパスが確立できるのでは
メディカル・ケア・サービス株式会社社長 山本教雄氏
「せっかく介護の世界に入っても、自分のキャリアアップが実現できずに他の業界に流れてしまうケースが多々あり、心を痛めていました。
より多くの事業者がこの会に集まれば、実現できることも大きくなっていくことでしょう。FUTURE CARE CLUBの広がりを願います。」
介護業界全体の課題解決に期待
株式会社ケア21 東日本介護事業部 東日本地域連携部 部長 楊裕成氏
「日々の業務で人材不足を実感しています。スタッフの待遇改善ができれば業界の未来も明るくなるでしょう。経営者同志の横のつながりが必要な段階に来ていると痛感していました。
FUTURE CARE CLUBのような多くの事業者が集まる場ができることは、問題題解のきっかけにつながると思います。」
介護離職の問題なども改善できるのでは
株式会社ヒューマンリンク社長 田中紀雄氏
「介護業界の周辺産業にお金が出てしまう構造、特に人材紹介会社の手数料には疑問を抱いています。
例えばWebサイトで募集した場合、中間であるWebサイトの運営元に手数料を払わなければならないケースがありました。
求職者が直接応募したと認識していても、実は本人が知らないうちに中間で搾取されているのです。しかし、異議を唱えれば次から紹介してもらえなくなってしまう。それは困るので手数料を払っている、という現状があります。
私の経営する事業所は、多くのスタッフが20代から40代の女性です。30代後半になると家族の介護が必要となり退職せざるを得なくなる、という問題が出てくる。
女性が多く働く環境で、従業員の待遇を改善しようと試みていますが、「介護離職」の問題解決は難しいと実感しています。
このような問題も、FUTURE CARE CLUBが新たな視点から介護業界のことを発信し、行政へ適切にアピールすることで、状況が改善されるのではと期待しています。」
経営者同士の交流だからこそ価値がある
「親睦会で話をしてみると、既存の枠を超えたチャレンジングな試みをしている介護事業者があり刺激を受けました。
一方で私の経営する事業所では、下は20代から上は81才まで幅広い年齢層のスタッフが働いています。その多くは女性で、平均年齢は60才前後。80代のスタッフは4名おり、年下を介護するほど元気です。このような事例があることも他の方にお伝えできたらと思います。
これまで介護事業者同士の交流は、地域包括支援センターを中心としたケアマネージャーの勉強会、といった規模のものしかありませんでした。経営者同士で情報交換のできるFUTURE CARE CLUBの発足で、介護業界に新しいものが生まれていくでしょう。」
高校生の介護バイトなど、新しい事例を共有していきたい
株式会社ツクイ 取締役常務執行役員 推進統括担当 高橋靖宏氏
「私には『若い人たちにも、介護の世界に入ってきてほしい』という想いがあります。
そこで、ある人材関連会社と協業し、一つの試みを実施しました。
介護の現場では、専門性が高い業務と、比較的専門性が低い周辺業務がある。その周辺業務を高校生に行ってもらい、介護の仕事に対する間口が広いことを伝えたのです。」
国や行政へ、意見を提示できる団体に
株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズ 黒須氏、和田氏、弁置氏、度一氏
黒須氏
「経営層だけでなく現場のスタッフも、国の制度がブレることで介護業界全体の根幹が崩れてしまうのでは?という危機感を抱いています。
大手介護事業者が連携するこのクラブは今後、行政へしっかりと提言できる発言力、影響力の高い団体になるでしょう。
介護業界の人手不足は深刻です。私が管理している現場では『仕事の依頼は来るけれど、対応するスタッフの人数が足りず断らざるを得ない』ということや、利用者の状態が悪化してサービス内容が重くなり、スタッフに無理をさせてしまうといったことが起きています。
FUTURE CARE CLUBの結成で介護業界のかかえる構造的な問題が改善され、現場がスムーズに回るようになることを期待しています。」
和田氏
「『介護利用者は増えても、介護の担い手は増えない。』それは業界の共通課題として、ほとんどの事業所が抱えていることでしょう。
そして、現場のスタッフ不足と同じくマネジメント層が薄い「管理者不足」も問題です。
的確な指示を出せる管理者そのものが足りていないのです。今後は、そうした課題も改善していければと考えています。」
「日本の介護業界は、新しいステージに入った。」
会場に揃った介護の未来を担う経営者たちが交わした熱い議論や彼らの表情から、そのように確信させられました。今後のFUTURE CARE CLUBにどうぞご期待ください。